若い医師が救急搬送からの入院を取らない問題

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ぼくが働いている病院は地域の2次救急病院です。

2次救急病院というのは手術や入院が必要な症状の重い救急患者に対応する病院のことです。比較的軽症であれば夜間休日の診療所が対応します。

もちろん、入院や手術が必要ではない患者もおりますが救急車で来院するからには入院する可能性が高くなります。

救急搬送から入院する割合目標を設定している病院は多いですが、全国平均の入院率は40%〜50%程度です。(3次救急の病院であれば高くなる)

入院率を50%目標としているのですが最近は目標未達で下回っております。この問題を解決するために考えたことをまとめてみました。

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入院率が下がっている理由は3つある

入院率が下がっている理由は大きく分けて3つありました。

  1. 救急搬送の増加
  2. 入院対象患者の減少
  3. 救急センターの医師が入院を取らず返してしまう

一つ目は救急搬送件数の増加です。

これは病院にとって嬉しい状態です。消防隊から搬送先を決定する際に選ばれていることになります。母数が増えた結果、ベッド数や医師は増えていないので入院率が下がってしまう状態です。

二つ目は対象患者の減少です。

対象患者が増えた結果、比較的軽症の患者さんも搬送されてくるようになりました。入院を必要とする患者さんが急激に増えることはありません。

三つ目は救急対応医師の問題です。

平日の昼間であれば常勤医師が対応します。病院運営にも理解があり入院率も問題ありませんが夜間休日は非常勤医師が対応することもあります。

本来であれば入院対象であっても帰宅させてしまう問題があります。

時間帯別や診療科別に入院率を出してみると問題点が浮き彫りになりました。

非常勤医師にとって入院はとても面倒臭い仕事

非常勤医師(=若手アルバイト医師)はなぜ入院を受入ないで帰宅させてしまうのでしょうか。

これは入院させるまでのハードルがとても高いからです。

入院をさせるには救急外来から病棟に連絡をして空き状況を確認する病院内の手間。カルテ記載と入院主治医への報告説明の手間。本人や家族への説明の手間。などがあります。

これらを夜間休日に行うのは面倒です。ならば応急処置である点滴や処方をして「昼間になっても回復しなかったら連絡してください」と帰宅させた方がラクなのです。

非常勤医師(=若手アルバイト医師)は1回いくらの契約なので入院させてもメリットがない。できるなら穏便に朝を迎えたい気持ちがあります。

入院の受入ハードルを下げれば入院率は回復するのか

入院を取らない理由を非常勤医師にヒアリングしたところで、できない理由なんで100個くらいあるので意味がありません。

受入のハードルを下げたところで新しいできない理由が発生する可能性もあり、非常勤医師だけにルールを適用するのかと言った問題もあります。(常勤医師は当然のようにやっている)

医師の働き方改革もあり非常に難しい問題となっています。

入院率目標を設定して達成した場合にインセンティブを与えるパターンもありますが、必要以上の入院させてしまう可能性や、本当に対象患者が来院しない場合にマイナスの印象を与える可能性もあります。

昭和の根性論で入院させろバカ野郎と言っても意味がありません。悪評が広まって非常勤医師が集まらなくなります。

押しても引いてもダメ。アメもムチもだめ。

本日のまとめ。正攻法でやってみることにした

救急搬送件数に比べて救急からの入院率が減少している問題を非常勤医師へ「当院にとって救急からの入院数は非常に重要なので協力してほしい」と正直に伝えました。

また救急センターの職員に対しても非常勤医師に入院を増加させる必要性について説明をしました。

特別な解決方法がない以上、正攻法が一番の解決策になるのではないかと考えました。小手先のテクニックも持ち合わせおらず手持ちの手札も少ない状況です。

結果が出るには時間がかかります。事業計画目標を達成できるように救急件数と入院率に注力していきます。