適時調査がありました。
準備段階から関連部署と情報共有し、必要書類を揃え当日も淡々と進みました。久しぶりの適時調査ということもありドキドキしていましたが無事に終了しました。
調査中に「本当に目的を果たしているのだろうか?」という違和感がありました。今日はそんな話です。
医師・看護師の負担軽減を形式で測るのは違うと思った
医師の働き方改革という大義をもとに医師や看護師の負担軽減策が正しく運用されているかをチェックする項目があります。
制度趣旨は明確です。医療従事者の長時間労働を是正し、働きやすい環境を整えること。言葉にすれば、誰も反対しない正しい施策。
ぼくが働いている病院では医師・看護師の残業時間は少なく、月の時間外労働も基準を大きく下回っています。有給休暇の取得も比較的進んでおり、部署ごとに負担軽減の工夫が日常的に行われています。
制度の目的は、ほぼ達成できているはずです。
しかし、調査員からは「書き方が規定どおりではない」「計画書の項目が足りない」「この部分の表現は省略せずに記載してください」などなどチェックのためのチェックを長々としてきました。
実態や成果には触れず、紙の上の形式ばかりが問われるのが本当に苦痛でした。生産性という概念がとても欠如していると感じていました。
目的と手段が入れ替わる瞬間
制度は「負担軽減」という目的のために作られたはずです。その目的を達成するための手段が「計画書の作成」や「実施状況の記録」です。
ところが、調査現場ではいつの間にか手段のほうが主役になってしまう。
目的を達成していても、手段の形式が整っていなければ減点。逆に、実態が伴っていなくても、形式さえ満たせばクリアできる構造です。
これは制度全般にありがちな「目的と手段の逆転」です。
公的な調査や監査では、成果を直接測るのが難しいため、測りやすい形式や数値に基準が寄っていきます。形式基準は公平性を担保する一方で、現場を反映しづらいのが難点です。
まさに形式主義。形式主義になる理由もわかりますが、少子高齢化のこの時代に審査する側の意識改革も必要だと思いました。
現場の違和感と副作用
現場から見ると、この形式主義はどうしても生産性の低い作業に映ります。実際に残業を減らし、休暇取得率を上げ、職場環境を改善しているにもかかわらず、計画書の文言やフォーマット不足で“改善を求められる”のは理不尽に感じます。
しかも、この指摘対応に時間を割くこと自体が、別の負担になります。医師や看護師の負担軽減のための制度が、結果として事務側の負担増につながる。
この矛盾は笑うしかありません。
本日のまとめ
適時調査は数年に一度のイベントですが、準備と対応に費やす時間と労力は軽く数十時間単位です。普段から準備をしているつもりでも一つの失敗で多くの返還になる。
形式的な指摘のためにその時間が費やされるなら、それは制度の副作用と言えるでしょう。
それでも、調査をきっかけに「目的は何か」「現場の工夫は反映されているか」を考えることには意味があります。制度の形骸化を防ぐためにも、形式だけでなく成果を見る視点が、もう少し強まってほしいですね。