急性期病棟(看護配置7対1)の稼働率が下がる病院のリアル

第3章 病院事務
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病床稼働率90%以上がぼくが働いている病院では自慢でした。ところが今、同じ病院の病床が意図的に空けられています。

病院のベッドが埋まらないなんて、一見すると平和な話に聞こえる。しかし現場では空いたベッドを見るたびに背筋が寒くなる思いです。

ベッドが埋まらないということは売上が上がらないってことですからね。

患者が減ったからではなく看護師不足という深刻な事情がその背景にあります。

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急性期病棟(看護配置7対1)の理想と現実

急性期病棟(看護配置7対1)の理想は十分な看護体制のもとで多くの患者に医療を提供すること。

制度上も7対1の手厚い看護配置には高い診療報酬が与えられており、病院経営的にもベッドを埋めることは重要です。

でもね。現場の実態は制度の想定と違う。ぼくたちの病院では、慢性的な看護師不足のために一部の病床をあえて空けて運用せざるを得ない状況が続いています。

矛盾しているようだがベッドをフル稼働させることができないのだ。

看護師不足は全国的な問題です。実際、厚生労働省の調査では多くの病院で病床利用率(稼働率)が低下傾向にあります。今では80%を維持できず70%前後にとどまる病院も多い。

病床が空いている理由は単純で看護師が足りないからだ。この現実を、制度設計者や報道が本当に理解しているか疑問に思う。

看護師の人数に合わせて病床数を考えている

急性期病棟では、正式な病床数に対し常に数床を「休床」(スタッフ不足のため一時的に閉鎖)にして運用するようになりました。

朝礼で「今日も10床は休止。受け入れは最大5人まで」といったやり取りをしています。

現場の看護師たちも疲弊している。スタッフがギリギリのため有給休暇どころか体調不良時の欠勤すら周囲に大きな負担をかけてしまう。

結果として離職者が出て人手不足が悪化する負のスパイラル。総務として人員配置や採用にも関わるので求人を出しても応募が集まらない現状に頭を抱えている。

看護師の有効求人倍率は他職種よりも高く、まさに売り手市場。

求人会社によると人手不足で休棟に追い込まれた病棟が複数あり看護師だけで約200人の欠員が生じていた。つまり、ベッドそのものより看護師という“マンパワーの空床”が問題なのだ。

本日のまとめ

制度では書類上の「7対1病床数」や「重症度25%以上」といった要件があります。

しかし、その数字の陰で現場は埋めたくても埋められないベッドと格闘している。制度と現実のギャップに挟まれ病院経営も現場の士気も揺らいでいるのが正直なところです。

空いている病床は「病院で最も高価な空間」とも言われるように、使われないベッドはコストだけがかかり続ける。

この問題に簡単な解決策は見当たらない。看護師を増やせと言われてもそんな簡単に人は集まりませんし育ちません。このままでは病床削減に追い込まれ、地域の医療提供体制にも影響が及びます。

国や行政が稼働率の低下だけを見て「ベッドが余っている」と判断すれば、安易な病床削減につながりかねません。しかし需要が無いのではなく人手が無いだけだという点を忘れてはいけませんね。