診療報酬返還と病院喫煙問題に見る現場の矛盾

第3章 病院事務
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岐阜赤十字病院で敷地内禁煙のルールに反して職員が喫煙していたことが発覚し、その結果、この病院は禁煙外来(喫煙治療)の診療報酬約450万円を自主返還するというニュースがありました。

禁煙を指導する立場の病院で、職員が裏ではタバコを吸っていた——なんとも皮肉で、現場の矛盾を感じさせる出来事だ。

今日はこのニュースから感じたことを書いておきたいと思います。

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禁煙要件の厳しさと現場のギャップはあるよね

禁煙外来を行う医療機関では「施設内全面禁煙」が診療報酬を受け取るための必須要件になっています。

要するに病院の敷地内で誰もタバコを吸っていません、と胸を張って言えないと、禁煙治療に関する保険診療のお金はもらえない仕組み。

理念としては「医療機関自ら率先して禁煙を徹底しましょう」ということだし、その趣旨はよく分かる。患者さんに禁煙治療をするなら病院自体がタバコの煙とは無縁であるべきというのは筋が通っているように思える。

でもね、病院といえども人間の集まり。スタッフ全員が完全にルールを守るのは簡単ではありません。大きな病院になれば敷地も広大だしスタッフ以外にも入院患者さんや面会家族などにも注意をし続けることは非現実的です。

岐阜赤十字病院では2005年から敷地内全面禁煙を続けてきたそうだけど20年近く経っても結果的に一部の職員は「隠れて一服」してしまっていた。

医療者だって人間だし中にはニコチン依存を抱える人もいるだろう。夜勤明けやストレスの多い勤務の合間に「ちょっとくらい…」という誘惑に負けてしまう気持ちも正直わからなくはない。

ぼくは通報者の感情が一番気になるところ

昨年末に「病院の敷地内で職員が喫煙している」という匿名の通報があり病院は全職員に聞き取り調査を実施し16人が喫煙していたとありました。

病院としては、「ルール違反を見逃さない」という姿勢を示さざるを得ない。実際、発覚後に禁煙外来の診療は停止され病院は「診療報酬を返還すればよいという問題ではない」とコメントしつつ深く謝罪する事態。

さらに再発防止のため、違反した職員の処分検討や、敷地内の定期巡回(見回り)強化、全職員への改めての周知徹底やコンプライアンス研修の実施などの対策に乗り出すようです。

正直、「そこまでやるのか…」という印象もあるけれど組織として信頼を回復するためには致し方ないのかもしれない。

550名にどのように確認をしたのかわからないけど相当な労力だったろうな。

医療従事者の喫煙率を考えると550人のうち16人というのは信頼できない数字ですけどね。

ルールを厳格化するとハックする人が増えるジレンマ

この問題、現場の職員や総務担当者にとっても大きなジレンマだと思う。

ルールを守ることはもちろん大事。でも忙しい業務の合間にストレスでどうしても一服してしまうことをどれだけ厳しく責められるだろうか。診察室で喫煙していたわけでもないですからね。

一方でその一服が病院全体の信用を揺るがし450万円もの返還や診療科の停止の現実。

病院管理の立場から見れば「健康増進に努めるべき場所で裏切られた」となるし、だからこそ違反者には処分も検討せざるを得ない。

しかし現場を知る身としては、そこに至る事情や人間味にも思いを馳せてしまうのだ。病院の敷地を挟んだコンビニなどで喫煙している人も多くいる。敷地という線引き。

病院駐車場の自家用車内で喫煙している人もいるでしょう。患者や業者もありますからね。

本日のまとめ

結局のところ、制度の理想と現場のリアルの間には大きな溝がある。医療現場では患者さんの健康第一が掲げられる一方で、働く人たちも悩みや弱さを抱えながら業務に向き合っている。

全面禁煙という厳格なルールと、それを現実に運用する難しさ。

医療の理想と現場のギャップ、あなたはどう感じるだろうか。

診療報酬の返還と敷地内禁煙のルール。原則的には行政に関わる施設は全て対象になっている。役所だって喫煙者はいるでしょうが発覚しても対外的な罰則はありません。

とりあえず月曜日から院内への周知徹底を行います。ぼくは禁煙とは言えないが見つかるようなことはするな。くらいで守ってもらえるような組織にしたいけどね。

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