病院の総務として働くのに必要な国家資格というのはありません。極論を言ってしまえば誰でもどんな人でも病院総務として働くことは可能です。
医師、看護師、理学療法士、管理栄養士など病院で働くには国家資格が必須であることが多い中、希少な職種であります。
医療事務は民間資格のみです。病院総務として働きたい人はどのような資格があると良いのでしょうか。ちょっとだけ考えてみました。
病院事務のキャリアに実際に「効く」資格をピックアップ
総務としての業務は幅が広く病院によって差があります。
契約管理、地域連携、災害対策、運営管理、備品設備、請求処理、教育などなど。経営・労務・法務・データ・安全管理まで含めると本当に多岐にわたります。
なので人によっては全く使えない資格の可能性もありますが幅広くピックアップしてみました。
すべてを取る必要はありませんし、取ったからといって万能になるわけでもありません。あくまで総務の引き出しとして、知っておくと役に立つものです。
- 医療経営士
病院の経営改善、部門マネジメント、人事労務など総務・企画向け
事務長候補の基礎資格として全国的に評価が安定
現場改善や増患・売上分析など、総務の実務と相性が良い - 診療情報管理士
DPC、データ提出加算、医療安全、統計分析など
経営判断のデータ基盤を理解できるため、管理職なら知識だけでも強力な武器
実務で活かしやすく、市場価値も高い - 医療事務（医科・調剤）
基本的な点数算定・請求の理解
総務・企画でも「制度理解が深まる」という意味で必須級の基礎教養 - 中小企業診断士
経営戦略・財務・組織論・マーケティングなど 病院経営の骨格を学べる国家資格
総務主任〜事務長を目指す人には、最強クラスの汎用性
病床再編、部門収支の事業計画などにも直結 - 社会保険労務士（社労士）
労務管理・就業規則・働き方改革を理解する専門資格
病院は労務トラブルが多く、総務での実務価値が非常に高い - 医療情報技師（医療情報技師能力検定）
電子カルテ、医療DX、セキュリティ、標準規格の知識
IT部門が弱い病院では、総務がシステム調整を担う現場も多い
今後の医療DX化を考えると 取っておくと希少価値が高まる - ファシリティマネジャー（病院FM向け）
建物・設備・環境管理の専門資格
災害訓練、レジオネラ、老朽化対応などを体系的に学べる
病院総務で役立つ数少ない設備系資格 - 医療安全管理者
医療安全体制、ヒヤリ事例、委員会運営など
管理職として安全文化を理解していることが強みになる
資格というより 役職者の必須基礎 - 公認内部監査人（CIA） or 内部監査実務士
病院のガバナンス、契約書審査、リスク管理に強くなる
「総務 × リーガル × 内部統制」ができる人材は希少 - ITパスポート
IT・情報セキュリティ・DX・経営の基礎を横断的に学べる
電子カルテ、クラウド、情報漏洩、委託業者管理の会話が通じるようになる
「ITに強い総務」「話が分かる管理職」ポジションを作れる - 防災管理者／BCP関連資格（研修修了）
災害拠点病院・BCP・事業継続計画の実務
地震・停電・断水・感染症流行時の判断力が上がる
行政・消防とのやりとりにも強くなる - 簿記2級（商業簿記）
病院会計は特殊だが、予算・収支・委託費・設備投資の理解力が段違いに上がる
経営会議で数字の話が怖くなくなる
中小企業診断士・医療経営士とも相性が良い - 大学院（保健医療学・医療マネジメント系）
国家資格よりも箔はつく修士の学位
病院内でも取得者は非常に少ない希少資格
研究や政策・経営視点が身につく
それぞれの難易度は以下の通りです（あくまでざっくりです）
もちろん、どれも簡単ではありません。
時間・労力・お金をかけてまで取る価値があるかどうかは、立場と目的次第です。
難易度
★★★★★ 大学院（保健医療学）／中小企業診断士
★★★★☆ 社労士／診療情報管理士
★★★☆☆ 医療経営士2級／簿記2級／セキュマネ
★★☆☆☆ 医療経営士3級
★☆☆☆☆ ITパスポート
取得資格は実務能力と直結しない 無駄にとる必要はない
資格は実務能力と必ずしも直結しない。だから無駄に数を取る必要はないと思っています。
「肩書き」ではなく「思考の型」。物事をどう整理しどう判断するか。その視点を手に入れるための道具にすぎません。多くても3つあれば十分でそれ以上は過剰になりやすい。
大事なのはいまの業務で何に困っているのか。その課題を解決するために必要なら取る。そうでなければ、取らない。それくらい割り切っていい。
資格取得には時間も労力もお金もかかりますからね。簡単だから、持っていないと不安だからという理由で取る必要はありません。
結局のところ、大事なのは資格ではなく能力です。
どれだけ資格を持っていても、人の話を聞けない・状況を読めない・他者と協働できない・感情のコントロールができない など。問題があれ実務では評価されません。
資格は武器なので使える人が持ってこそ意味があります。土台があって初めて資格は活きる。だからこそ使える力を磨くことを優先したいですね。