ハラスメントの正体は「感情の処理不全」

第3章 病院事務
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職場で管理職向けのメンタルヘルス研修がありました。

その中で「ハラスメントの正体は感情の処理不全だ」という考え方がいちばん腑に落ちた言葉になります。

ハラスメントというと、やってはいけない行動や言ってはいけない言葉といった表層の話になりがちです。しかし現場で起きている問題は、そんなに単純ではありません。

むしろ多くの場合、感情が処理されないまま外に漏れた結果としてハラスメントが起きているのです。この視点で見ると、いろいろなことがつながってきます。ちょっと面白かったのでまとめておきたいと思います。

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何を言ったかより、誰が言ったか

研修中の事例を聞きながら、強く感じたことがあります。それは、

何を言ったかより、誰が言ったかで受け取り方は大きく変わる

という事実です。

正直な話、ぼくも好意的なAさんに言われる同じ言葉と苦手なBさんに言われる同じ言葉では、感じ方がまったく違います。

内容は同じでもAさんなら「指導や応援」になるのにBさんなら「パワハラや嫌がらせ」と受け取ってしまうことがある。

ギャグや冗談も同じです。場が和む会話になるかセクハラになるかは言葉そのものより関係性に左右される。

これは感情論ではなく人間の認知の仕組みです。

指導とハラスメントを分ける「信頼残高」

ここで重要になるのが、ぼくが勝手に呼んでいる「信頼残高」という考え方です。

日頃の関わりの中で、

  • 公平に接しているか
  • 一貫した態度を取っているか
  • 相手を尊重しているか

こうした積み重ねが信頼残高になります。信頼残高が十分にある人の言葉は多少厳しくても指導として受け取られやすい。

逆に、普段から雑な態度、上から目線、無責任な言動をしている人は正論を言っても攻撃に聞こえる。つまり、ハラスメント対策とは言葉遣いの問題ではなく関係性の問題です。

事例研修が効きにくい理由

ハラスメント研修では具体的な事例が紹介されました。ただ、正直に言うと事例研修が現場でそのまま役立つことは多くありません。

理由は単純で事例は結果が分かった後の物語だからです。

現場で起きるのは、

  • グレーゾーン
  • 文脈依存
  • その場では判断できない状況

ばかりです。

事例を見てこれはダメだよねと思っても、自分の行動は変わらないものです。ハラスメントはマニュアルで防げるものではありません。必要なのは普段からの人間関係の質です。

感情を扱うための3つの考え方

研修では、アンガーマネジメントやマインドフルネスの話も出ました。ぼくはそこにアドラー心理学の「課題の分離」も重なると感じました。

の課題。

  • マインドフルネス:感情を消すのではなく、今イラッとしているなと気づくこと。
  • アンガーマネジメント:感情が噴き出す前に一瞬立ち止まること。
  • 課題の分離(アドラー心理学):相手がどう受け取るかは相手の課題。自分がどう伝えるかは自分の課題。

これらに共通しているのは、相手をコントロールしようとしないという姿勢です。

感情を抑え込むのではなく主導権を取り戻すための技術。それがセルフケアであり、コーピングなのだと思います。

ハラスメントは人を裁くための言葉ではない

ハラスメントは悪者を探すための概念ではありません。組織に余裕がなくなったとき感情が処理されなくなったとき最初に表に出てくる「症状」のようなものです。

だから、厳しさを封じるだけでも優しさを押し付けるだけでも問題は解決しません。必要なのは感情を扱える大人を増やすこと。そして、普段の関係性を丁寧に積み上げること。

ハラスメント対策とは、研修資料ではなく、日常の会話の質を上げることなのだと感じました。