仕事というのは、基本的に増えていくものです。
新しい業務が追加されるのはスキルや経験が認められた結果かもしれないし、人の退職や異動でやむを得ず引き受けることもあります。
ここで問題なのは「増える一方で、減らない」こと。
だから、仕事は意識的に“減らす”努力が必要です。
不要な業務はやめて、必要だけど自分でなくてもできることは、きちんと引き継ぐ。スケジュールも管理して、定時に帰れるように調整する。残業はなるべくしない。
ぼくはそんな姿勢で仕事をしています。
しかし、先日ある人への引き継ぎがあり仕事に対する考え方の違いに驚かされたので書いておきたいと思います。
いわゆる、生活残業型の働き方。
決して怠けているわけではない。
ただ、長年の会社員生活の中で、ゆっくり働くスタイルが染み付いてしまった印象だった。
そう感じたのは、引き継ぎの最中。こちらがスケジュール通りに仕事を終えても、定時を過ぎても帰らない。仮にその人をAさんとします。
理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。「早く帰っても家で酒飲むだけ。酒量が増えて、お金もかかるから。」
このとき確信しました。
──思考の構造がまるで違う、と。
自分はどうすれば早く帰れるかを考えているのに、Aさんの前提は「残業ありき」。しかも、仕事を抱え込んで減らそうとしないから、どんどん非効率になっていく。
やることを整理しても、なぜか残業は減らない。不思議な現象に見えるけど、実際はただ効率が悪いだけ。
仕事は遅く、ミスも多い。その根っこにあるのは、スケジュール感覚の欠如だと思っている。やるべきことの優先順位をつけず、全部を同じように抱え込む。
それじゃあ、いつまでも前に進めない。
年功序列の給与体系では長く勤めることが正解となってしまう
ここにさらに制度の歪みが重なります。
たとえば、年功序列の給与体系。能力や成果ではなく、年齢で収入が決まる。その中では、たとえ若手がいくら努力しても、ベテランの給料を追い越すことはまずない。
Aさんとは10歳離れていて、その10年分の昇給差がある。昇給幅が小さい現場では、この差は埋まらない。役職にでもつかない限り、逆転はしない。
その結果、若い世代のモチベーションは下がっていく。しかも、50代の人件費がかさむせいで、若い世代の給与改善にも限界がある。
人が減っても、改革が進まない理由の一つです。
だから大企業が「45歳以上の早期退職」を打ち出すのは、ある意味で合理的なんです。年齢と給与が見合わなくなるのは、どこでも起きていること。
病院の世界も例外ではありません。むしろ、制度の古さが際立つぶん、変化が遅れているとも言えます。
このままでは、他業種に人材を奪われていくのは明らかです。そして現場には、若手がやる気を失い、能力ある人ほど先に辞めていくという悪循環が残る。
本日のまとめ
目の前の仕事に追われていると、何が正解か、見えなくなることがあります。
ミスが起きたとき、「人のせい」にしたくなりますが、実際はシステムの問題であることが多い。属人的なやり方に頼りすぎると、引き継ぎは難しくなります。
だからこそ、誰がやっても同じ成果を出せるような仕組みをつくることが大切です。スピード、精度、好き嫌い──そういった“個性”を抜きにして、標準化する。
今回の引き継ぎでは、ゼロから理解し直し、マニュアルを整え、次に繋げる仕組みをつくりました。効率化は、現場の余白を生み出します。それは、働き方の改善に直結します。
仕事をただこなすのではなく、「減らす力」も磨いていかないと──。