老健(介護老人保健施設)に入所している患者さんが外来受診をするときの算定項目について勉強しましたのでまとめておきます。
老健(介護老人保健施設)は介護保険を使用しているので病院での医療保険と併用は基本的にはできません。
医療事務の現場でも老健(介護老人保健施設)入所中の患者さんが外来受診をされると多少の混乱はあります。
ぼくも毎回診療点数早見表を確認してチェックします。
診療内容によって「算定ができる項目」と「算定が出来ない項目」が別れているからです。
これって算定する医療事務からすると面倒くさいの一言に尽きます。
医療事務の誰でもつまずく老健(介護老人保健施設)の算定方法について勉強がてらまとめてみたいと思います。
老健(介護老人保健施設)の入所者さんは外来受診する必要はないという基本的な考え
医療事務なら誰もが混乱する老健(介護老人保健施設)入所者さんの外来受診ですが、なぜこのような複雑な制度になったかを考えてみると少しは納得ができます。
そもそも老健(介護老人保健施設)は少々特殊な施設であって、施設でのリハビリを得て在宅復帰を目標にしている要介護認定をされている方という名目があります。
期間も3ヶ月や6ヶ月で退所するようにリハビリスケジュールを組むのが基本的なルールです。
実態は長期で入所されている人もいますけど…。
また特別養護老人ホームなど他の介護施設とは違い医師の配置が定められていますのでちょっとした疾患であれば施設の医師で対応しましょうとなっています。
通則にもしっかり書かれています。
<通則>
介護老人保健施設には常勤医師が配置されているので、比較的病状が安定している者に対する療養については、介護老人保健施設の医師が対応できることから、介護老人保健施設の入所者である患者が、往診又は通院により受ける医療に係る診療料については、施設入所者以外の患者に対する算定方法とは別の算定方法を設けたものであり、施設入所者に対しては、第1章基本診療料又は第2章特掲診療料は適用せず、第3章介護老人保健施設入所者に係る診療料に規定するところによるものであること。
最初の注意事項は併設保険医療機関であるかどうかです。
これは病院側の問題になりますが、併設されているかどうかで算定できる項目に大きな違いがあります。
いろいろと細かいルールはありますが自分の働いている病院の敷地内に併設してリハビリテーションの施設などを共有している老健(介護老人保健施設)があるかどうかで判断できます。
同系列のグループ老健がありその入所者さんが受診されるときは併設保険医療機関と言えます。
- 併設保険医療機関 :併設されており病院施設の一部を共有しているのだから算定する項目を減らします
- 併設保険医療機関以外:独自で頑張っているのだから併設保険医療機関よりは算定する項目は多いです
って感じです。
なので受診してくる患者さんが併設かどうかは判断する必要があります。
受診時に算定できる項目についてまとめ
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1022-8h.pdf
ちょっと古いですが厚労省からも書かれている通知がありました。
基本的には10年前から変更はないみたいですね。
ぼくのざっくりとした考え方は医師のいる老健施設でも行えるものは算定不可になっている印象です。医師がいるところには医師に働いてもらいましょ。って考え方です。
一応文字にして書きますが、診療点数早見表などの一覧を確認してもらった方がわかりやすいかもしれません。
併設保険医療機関で算定できる項目
- 基本診療料 :×
- 医学管理等 :×
- 在宅医療 :×
- 検査 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 画像診断 :○
- 投薬 厚生労働大臣が定めるもの :○
その他のもの :× - 注射 厚生労働大臣が定めるもの :○
その他のもの :× - リハ 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 精神科専門療法 :×
- 処置 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 手術 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 麻酔 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 放射線治療 :○
- 病理診断 :○
丸が算定できるものです。画像診断や放射線治療は老健(介護老人保健施設)では実施できないので算定が可能ですが簡単な処置などは老健(介護老人保健施設)で実施できるので不可となっています。
その他の併設保険医療機関以外で算定できる項目
基本的な考え方は上記と同じですが併設していない分診療情報提供書や再診料などが算定できるようになっています。
- 基本診療料 :○
- 医学管理等 紹介状など :○
その他のもの :× - 在宅医療 往診料 :×
その他のもの :○ - 検査 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 画像診断 :○
- 投薬 厚生労働大臣が定めるもの :○
その他のもの :× - 注射 厚生労働大臣が定めるもの :○
その他のもの :× - リハ 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 精神科専門療法 :×
- 処置 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 手術 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 麻酔 厚生労働大臣が定めるもの :×
その他のもの :○ - 放射線治療 :○
- 病理診断 :○
厚生労働大臣が定めるものってなに?
病院と老健でそれぞれで算定してしまうと社会保障の面から見ても莫大な負担が生じるからしっかりと線引きを行なって舵取りをしています。
基本的な考え方は老健(介護老人保健施設)で実施できるものは保険医療機関で算定できないようになっています。老健にも必ず配置されているリハビリテーションなんかはいい例ですね。
検査で厚生労働大臣が定めるもの
以下の項目が算定不可です
- 第1節 検体検査(一部除く)
- 呼吸循環機能検査(一部心電図など除く)
- 負荷試験等 D286 肝及び腎のクリアランステスト、D287 内分泌負荷試験、D288 糖負荷試験
- その他特殊な検査
なので検体検査は基本的に算定不可で生体検査は算定可能ですね。
投薬で厚生労働大臣が定めるもの
以下の項目が算定可能です。それ以外は算定不可
- 抗悪性腫瘍剤( 悪性新生物に罹患している患者に対して投与された場合に限る。)
- 疼痛コントロールのための医療用麻薬の費用
- 抗ウイルス剤( B型肝炎又はC型肝炎の効能若しくは効果を有するもの及び後天性免疫不全症候群又はHIV感染症の効能若しくは効果を有するものに限る。)
特殊な投薬のみが算定可能なので多くの投薬は算定不可能になります。
注射で厚生労働大臣が定めるもの
以下の項目が算定可能です。それ以外は算定不可
- 外来化学療法加算
- 外来化学療法に関する手技
- エリスロポエチン( 人工腎臓又は腹膜灌流を受けている患者のうち腎性貧血状態にあるものに投与された場合に限る。)
- ダルベポエチン( 人工腎臓又は腹膜灌流を受けている患者のうち腎性貧血状態にあるものに投与された場合に限る。)
- 抗悪性腫瘍剤( 医科点数表第二章第六部注射通則第 6 号に規定する外来化学療法加算を算定す る注射に係るものに限る。)
- 疼痛コントロールのための医療用麻薬の費用
- インターフェロン製剤( B型肝炎又はC型肝炎の効能又は効果を有するものに限る。)
- 抗ウイルス剤( B型肝炎又はC型肝炎の効能又は効果を有するもの及び後天性免疫不全症候群 又はHIV感染症の効能又は効果を有するものに限る。)
- 血友病の治療に係る血液凝固因子製剤及び血液凝固因子抗体迂回活性複合体の費用
難しいですねw
リハビリテーションで厚生労働大臣が定めるもの
以下の項目が算定不可です。
- 脳血管疾患等リハビリテーション
- 廃用症候群リハビリテーション
- 運動器リハビリテーション
- 摂食機能療法
- 視能訓練
- その他特殊なリハビリテーション
基本的なリハビリテーションは老健でも実施可能なので病院で算定することはできません。
処置で厚生労働大臣が定めるもの
以下の項目が算定不可です。
(1) 一般処置のうち次に掲げるもの
イ 創傷処置(六千平方センチメートル以上のもの(褥瘡じよくそうに係るものを除く。)を除く。)
ロ 手術後の創傷処置
ハ ドレーン法(ドレナージ)
ニ 腰椎穿せん刺
ホ 胸腔穿くうせん刺(洗浄、注入及び排液を含む。)(保険医療機関の保険医が療養病床から転換した介護老人保健施設に赴いて行うものを除く。)
ヘ 腹腔穿くうせん刺(洗浄、注入及び排液を含む。)(保険医療機関の保険医が療養病床から転換した介護老人保健施設に赴いて行うものを除く。)
ト 喀痰かくたん吸引
チ 高位浣かん腸、高圧浣かん腸、洗腸
リ 摘便
ヌ 酸素吸入
ル 酸素テント
ヲ 間歇けつ的陽圧吸入法
ワ 肛こう門拡張法(徒手又はブジーによるもの)
カ 非還納性ヘルニア徒手整復法(保険医療機関の保険医が療養病床から転換した介護老人保健施設に赴いて行うものを除く。)
ヨ 痔じ核嵌かん頓整復法(脱肛こうを含む。)
(2) 救急処置のうち次に掲げるもの
イ 救命のための気管内挿管
ロ 人工呼吸
ハ 非開胸的心マッサージ
ニ 気管内洗浄
ホ 胃洗浄
(3) 泌尿器科処置のうち次に掲げるもの
イ 膀胱ぼうこう洗浄(薬液注入を含む。)
ロ 留置カテーテル設置
ハ 嵌かん頓包茎整復法(陰茎絞扼やく等)
(4) 整形外科的処置(鋼線等による直達牽けん引を除く。)
(5) 栄養処置のうち次に掲げるもの
イ 鼻腔くう栄養
ロ 滋養浣かん腸
手術で厚生労働大臣が定めるもの
以下の手術が算定不可です。
- 創傷処理(長径五センチメートル以上で筋肉、臓器に達するもの及び保険医療機関の保険医が療養病床から転換した介護老人保健施設に赴いて行うものを除く。)
- 皮膚切開術(長径二十センチメートル未満のものに限る。)
- デブリードマン(百平方センチメートル未満のものに限る。)
- 爪そう甲除去術
- ひょう疽そ手術
- 外耳道異物除去術(複雑なものを除く。)
- 咽頭異物摘出術(保険医療機関の保険医が療養病床から転換した介護老人保健施設に赴いて行うものであって、複雑なものを除く。)
- 顎関節脱臼非観血的整復術(保険医療機関の保険医が療養病床から転換した介護老人保健施設に赴いて行うものを除く。)
- 血管露出術
麻酔で厚生労働大臣が定めるもの
以下の項目が算定不可です。
- 静脈麻酔
- 神経ブロックにおける麻酔剤の持続的注入
本日のまとめ
長くなってしまいましたがこれでもコンパクトにまとめたつもりです。
老健に入所中の患者さんの算定は難しい感じがしますがひとつひとつ確認していけばそこまで難しいものではありません。
しっかり勉強していきます。