先日、訪問リハビリの職員が業務中に自転車で転倒し労災となりました。お大事に、と言いたいところですが、総務としてはここからが本番です。労災は治療だけで終わりません。事務手続きも山ほどあります。
労災には書類を提出後しばらくして労基署から「第三者行為災害届」という書類が届きます。交通事故など、加害者がいるかもしれない労災で求められる書類です。
人事部などの専門部署であれば別ですが、一般職員にとっては、かなり専門性の高い書類になります。求償だの控除だの、様式5号とは違うものです。
で、この書類がどういう経路で届いたかというと、労基署→本部の人事部→現場の職員。添えられていた案内は要約すると「進めるなら記載して提出、不要なら取り下げ用紙を」。以上。
書き方の説明も記入例もなし。つまり、丸投げです。
今日はそんな本部機能の仕事についてです。
集約したはずなのに、なぜ降ってくるのか
働いている法人では本部機能を別法人に集約しています。人事や経理などです。
現場に労務の専門家を置く代わりに、専門性は本部に寄せる。管理コストを払ってでもそうする価値がある、という建て付けのはずです。
ある程度規模のある医療法人では、珍しくない体制でしょう。
ところが実際に起きたのは逆でした。簡単な書類は本部がさばき、難しい書類ほど「本人名義なので」と現場に落ちてくる。
専門性が高いから集約したのに、専門性が高い業務ほど集約から漏れる。この逆説、心当たりのある方は多いんじゃないでしょうか。
たぶん本部に悪意はないんです。
本人名義の書類だから本人に送るという形式的なルーティンで処理されただけ。でもここに一つ目の落とし穴があります。
名義人と実務者は別人である
第三者行為災害届は確かに被災職員名義の書類です。
事故の状況は本人しか知らない。でも「名義人=書ける人」ではありません。求償の仕組みを知らない職員に示談交渉の有無を書けというのは、確定申告を初見で書けと言うのに近い。
毎年やっている年末調整だってまともに書ける職員は少ないでしょう。
実は労災保険法施行規則23条には事業主の助力義務というものがあって、請求手続が困難な労働者を事業主は助けなければならないとされています。
用紙だけ転送は、少なくともこの趣旨には沿っていない。名義人に届けることと、実務を担わせることは、別の話なんですね。
レア業務は分掌の空白に沈む
もう一つの構造問題は、この手の書類がめったに出ないことです。各部署で第三者行為災害届を頻繁に書くことはありません。そんなに労災が多発する部署があれば違う問題がありそうです。
人事部がどこまで業務分担をしているのかわかりませんが、毎月発生する業務なら担当は自然に決まります。でも頻度の少ない業務は発生した瞬間に気づいた人の仕事になる。
発生頻度は低いが一件の単価は重い。
この種の業務が現場に沈殿していく現象、労災に限らず思い当たる節がいくつもあります。
人事部の労災担当も似たような構造だったのではないかと思います。
で、どうしたか
今回は「本書類は専門性が高く現場本人での記載は困難」と本部にメールを入れ、人事部で対応できないなら総務で対応するから既提出の労災書類一式のコピーを請求しました。
すると人事部から電話がかかってきて、あっさり記載は人事部で実施しますと。
なんだ、言えば動くんじゃん、という話でもあるんですが、裏を返せば言わなければそのまま現場(自分)が書いていたということでもあります。
声を上げた案件だけ助かる運用は、運用とは呼びません。
人事部からすれば、ぼく(総務)が言ったから動いたのかもしれません。でも、現場の職員が同じように相談できるとは限りません。
というわけで次の一手は、本部対応/現場対応に切り分ける事務フローの整理が必要と思っています。一喝して終わるよりルールにして残すほうが安上がりなので。
集約は、分掌とセットで初めて集約になる。
書類の宛名を見るたびに、そんなことを考えた一件でした。