① 大学院のワークで、変な結果が出た
夜間や週末を利用して医療経営系の大学院に通っています。7月で前期が終わるんですけど思っていたよりも大変だったけど思っていたよりも楽しいというのが感想です。
先日、リーダーシップの授業で興味深いワークがありました。課題は「部下が上司に期待する20の特性」の中から、自分が上司として「そうありたい」と思う項目を7つ選ぶというもの。
有名なので知っている人もいるかもしれませんね。リーダーシップ・チャレンジ(The Leadership Challenge)で有名な「尊敬されるリーダーの特性」調査がベースです。

20項目には、世界規模の調査データをベースにした一般的に部下から選ばれる割合(選出率)が設定されています。働く人々が上司に望む王道が数字として示されているわけです。
ワークが終わり、小グループのメンバーで選択リストを見せ合った瞬間、思わず苦笑いが漏れました。あれ? 自分の選んだ項目、みんなと全然違わないか?
他の受講生と見比べると、ぼくの選んだ7項目は、露骨と言えるほど周囲から浮いていたのです。
② 3人で並べたら、1対2に分かれた
グループは3人組でした。AさんとBさんは選んでいる項目がほぼ一致していました。
・支える / 配慮がある
・協調性がある / 協力的
・心が広い / 包容力がある
・頼りがいがある / 守ってくれる
いわゆる「対人・受容系」や「温かさ・安心感」を感じさせる特性です。このあたりは部下から最も求められる王道の上位項目になります。Aさんは王道項目を5つ、Bさんは4つ選んでいました。
ぼくのリストは、対人・受容系なく、まったく異なる言葉が並んでいました。上位に選んだのは、選ばれにくい少数派項目です。
・想像力:18%
・成熟:16%
・独立心:11%
・自制心:6%
知的・想像力・独立心・自制心・成熟といった、考える力や個としての自律に関するものが中心でした
自制心は、100人中わずか6人しか選ばない項目です。人当たりの良い温かなリーダー像を選んだ二人と、ぼくの自律を重視した選択を並べると、真逆の結果です。
③ 問いの読み方が分かれていた
ディスカッションを重ねるうちに結果がズレていた原因が分かりました。実は、問いに対する無意識の前提が他の二人で違っていたのです。
このデータは「部下が上司に期待する特性割合」です。
したがって部下から好かれる上司、部下が求めている理想の上司の順位になります。他の人たちは、部下ウケ基準=部下が上司に何をしてほしいかで7つを選んでいました。
部下目線に立てば、
「話を優しく聞いてほしい(配慮)」
「失敗しても包み込んでほしい(心が広い)」
「守ってほしい(頼りがい)」
となるのは当然の心理です。
しかしぼくは、自分がそうありたい7つという言葉を、自分の納得基準=自分がリーダーとして立つための条件で受け止めていました。
自制心がある上司なんて、地味ですし、直接的な優しさとは見えにくい。
けれど、感情の起伏で指示を変えず、どんなトラブルにも動じず、冷静に己を律する自制心はぼくぶとってリーダーを務める上での基盤でした。
ぼくは、部下が望むリーダー像ではなく、自分が納得できるもの選んでいたのです。
④ 総務という仕事で、これが何を意味するか
これは病院の総務という泥臭い仕事の実感ともつながりました。
病院の総務は多様な人々と接します。清掃スタッフ、食堂の委託業者、病院に出入りする取引業者、医師、看護師、コメディカルなどなど。現場を円滑に回すために、日頃から笑顔で無駄話を交わし、困りなどに配慮して耳を傾けます。
一見すると、ぼくは支える・配慮の人として振る舞っていますが、自分の中でその温かさや配慮は、目的ではありません。あくまで円滑な組織運営のための手段です。
目的と手段の違いなんですよね。
ぼくにとって総務の仕事の本質は、部署間の利害がぶつかったとき、一歩引いた視点から、「主論はこっちですよね」「いま、手段と目的を取り違えていませんか?」と俯瞰して一言を投じることにあります。
雰囲気に流されず感情を制御する「自制心」、周囲の同調圧力に負けない「独立心」、本質を見抜く「想像力」がなければ、総務はただの「都合の良い板挟み係」で終わってしまいます。
そして重要なのは冷静で俯瞰した一言を現場に受け入れてもらうために、日頃の無駄話や雑談という地味な信用への投資をしていることです。
温かなコミュニケーションで信用を積み、いざというときに俯瞰して本質を捉えた判断をする。
⑤ 多数派の正解より、自分の判断軸
医療現場の管理部門(総務・人事・医事)にいると、正解に流されがちです。マニュアル通り、上層部や部下からの期待通り、に振る舞うことが正解のように感じられます。
部下から好かれる理想の上司像を目指すこと自体は、決して悪いことではありません。ただ、それが自分の価値観とズレているなら、無理に演じ続ける必要もない。
全体のわずか6%しか選ばない項目を自分の軸に置くことには、少し怖さもあります。自分は冷たいのではないか、変わっているのではないかと不安になることもあります。
耳をすませばのしずくのお父さんも「人と違うことをするのはしんどいぞ。なにが起きても人のせいにできない」と言っていましたからね。
けれど、周囲の多数派意見とズレたその場所にこそ、あなたというリーダーの固有の輪郭が存在しているのではないでしょうか。
最後に、この記事を読んでくださった病院管理部門の皆さんに、ひとつ問いかけたいと思います。あなたは今、部下が望む「使い勝手の良い上司」を演じていますか?
それとも、自分が心から納得できる「自分の軸」を持って立っていますか?
じぶんのアタマで考えよう じぶんの意見で生きていこう