レセプト点検を行っていたところ、内視鏡等の検査を行わずヘリコバクター・ピロリ感染症の検査を実施している患者さんがいました。
しかもその日は、初診(新患)を算定した患者さんです。
そんな時には算定していいのでしょうか?
ちょっと疑問に感じました。
ヘリコバクター ピロリ感染症の保険請求にはルールが定められています。
必要な適応病名もありますね。
なので今日は医療事務ならちょっと難しいと感じるヘリコバクターピロリ菌の算定方法について書いておきたいと思います。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の検査で保険適用するための対象患者のは以下の通り。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の検査を保険請求するのは難しいですよね。いろいろと細かいルールがあります。まずは医療事務必須の診療報酬早見表を確認しておきましょう。
【対象患者】
ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る検査については、以下に掲げる患者のうち、ヘリコバクタ ー・ピロリ感染が疑われる患者に限り算定できる。
- 内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者
- 胃MALTリンパ腫の患者
- 特発性血小板減少性紫斑病の患者
- 早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者
- 内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者
前提条件として、上記の対象患者さんにだけ保険での算定が可能となります。
なので、患者さんから
「ヘリコバクター・ピロリ感染症の検査をしてほしい」
とか
「胃の調子が悪い」
なんて言われても最初から検査をすることはできません。
胃の調子が悪くてヘリコバクター・ピロリ感染症の検査が必要なら内視鏡検査などを最初に行う必要があります。
ヘリコバクターピロリ菌の検査の種類。保険算定するためのルール。
上記対象患者さんに対し内視鏡検査を実施した後に、やっとヘリコバクター・ピロリ感染症の検査を実施することが出来ます。多くは内視鏡検査で胃炎や胃潰瘍の病名がついた場合ですね。
そして次のルールです。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の検査には種類や方法が決まっているんですよね。
【除菌前の感染診断】
(1) 除菌前の感染診断については、次の6項目の検査法のうちいずれかの方法を実施した場合に1項目のみ算定できる。ただし、検査の結果、ヘリコバクター・ピロリ陰性となった患者に対して、異なる検査法により再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限り算定できる。
- 迅速ウレアーゼ試験
- 鏡検法
- 培養法
- 抗体測定
- 尿素呼気試験
- 糞便中抗原測定
何回もヘリコバクター・ピロリ感染症の検査は出来ません。多くて2回の実施までです。
診療点数早見表にはわかりやすい治療の手順チャートがあるので必ず参照しておきましょう。以下が胃炎や胃潰瘍などの確定病名がついた患者さんに保険請求できる検査の一覧です。
- 迅速ウレアーゼ試験:D012「7」迅速ウレアーゼ試験定性
- 鏡検法 :N000病理組織標本作成
- 培養法 :D018細菌培養同定検査「2」消化管からの検体
- 抗体測定 :D012「9」ヘリコバクターピロリ抗体定性
「12」ヘリコバクターピロリ抗体 - 尿素呼気試験 :D023-2「2」尿素呼気試験(UBT)
- 糞便中抗原測定 :D012「24」ヘリコバクターピロリ抗原定性
これだけです。6種類しかありません。
また1、2、3は内視鏡下生検材料になります。
なので今回のケースはルール違反です。本日のまとめ
初診でいきなり「糞便中抗原測定(ヘリコバクター・ピロリ抗原定性:D012-24)」を実施していたのは明らかなルール違反です。レセプトにて請求する事は出来ません。
計算をしていた人も気がついてほしかったですね。
念のため医師にも確認したら「自費に決まってるじゃん」「説明?そんなのしてないよ」「診療費を正しく計算し説明するのが医事課の仕事だろ」と言われました。
まぁ、間違いではないですからね…。なので、患者さんに連絡を行い、精算をすることとなりました。
患者さんも保険請求の30%から自費分の100%の請求になりますので、3倍以上の金額を病院窓口で払うことになります。お互いにメリットがない精算です。
不要な間違いは、減らしていくようにしていかないといけませんね。
健康診断や人間ドックで内視鏡検査をしていればまた話は違ってきました。逆に言えば審査機関は健康診断の内容を確認することはできませんので…。