先日、行動変容に関する講義を受講しました。講義の中で最も印象に残ったのは、「やる気がない」という言葉の扱い方です。
ぼくたちは何かうまくいかないことがあると、つい「本人のやる気がないからだ」と考えてしまいます。
患者さんが運動を続けない。
新人職員が業務を覚えない。
ダイエットが続かない。
そんな場面で「やる気」という言葉はとても便利です。便利だからこそ、思考停止にもなります。
今日はそんな新人教育に関するできごとをまとめてみたいと思います。
人は楽な方へ流れる生き物です。
やる気がないというのは原因ではなく、行動が起きていない状態に後から付けられたラベルに過ぎないのです。
言われてみればその通りで、人は本来、楽な方へ流れる生き物です。
目の前に階段とエレベーターがあればエレベーターを選ぶ。夜中にラーメンを食べれば太ると知っていても食べる。運動した方が健康に良いと理解していてもソファで横になる。
むしろ、それが自然な姿なのだと思います。
医療従事者であれば健康には注意したほうがいいのは知っている当然の事実です。暴飲暴食はやめた方がいいし、深酒もたばこもやらない方がいいのは誰だって知っています。
それなのに、医療従事者であっても生活習慣を改善できない人は少なくない。
知識があることと、行動できることは別物である。
禁煙外来をしている喫煙者、栄養指導をしている不摂生。これは医療現場だけでなく、病院事務の仕事にもそのまま当てはまります。
新人教育の場面では、マニュアルや研修を準備し、一生懸命説明します。それでも現場では思ったように行動が定着しないことがあります。
すると指導する側はこう考えます。
「教えたのにやらない」「何回言えばわかるのか」「やる気がない」
医療事務時代から何回も聞いてきたセリフです。
しかし本当にそうでしょうか。
新人にしてみれば、何をすればいいのか分かりにくいだけかもしれません。業務が複雑で、まだ十分に習得できていないだけかもしれません。
そうやって退職せざるを得ない新人どれだけいたことか。
あるいは正しくできていても誰からも反応がなく、行動を続ける意味を感じられないのかもしれません。
原因を本人の内面に求めると、解決策は注意や指導しかなくなります。
一方で環境に目を向けると、できることは意外とたくさんあります。チェックリストを作る。業務フローを見える化する。小さな成功体験を積んでもらう。
できたときにすぐ声を掛ける。
こうした仕組みの方が、「もっと頑張れ」と伝えるよりも効果的だったりします。結局のところ、人は楽な方へ流れます。
それは欠点ではありません。
ぼくもそうですし、多くの人がそうです。
だからこそ、正しい行動を取ることが特別な努力ではなく、「それが一番楽な選択になる」環境を作ることが大切なのだと思います。
やる気を引き出そうとする前に、まず環境を整える。
今回の講義を受けて、病院の新人教育について改めて考えさせられました。