妊婦加算を算定していますか。2018年(平成30年)診療報酬改定でスタートした新制度ですがイマイチ評判は良くないみたいですね。
妊婦さんは通常の患者さんより診察も処方の注意が必要なことから報酬を高く設定した改定です。
この背景は理解できるのですが、現在の少子化や若い世代の賃金が伸び悩んでいる中で妊婦に対する加算を設定するのは得策とは言い難いですね。
実際にネットでも妊娠税だ!若者から搾取だ!ヒドイ!!なんて意見もあります。
そして算定するにもズボラというか穴だらけの制度となっていますね。妊娠を証明する必要はなく患者さんからの申告のみで算定の有無が変わってきます。
ぼくが妊婦さんなら胎児に絶対に影響のない皮膚科などの診療科なら妊娠を言わない。なんて選択をするかもしれません。
今日はそんな妊婦加算について書いてみたいと思います。
妊婦加算の算定方法。点数は初診時75点、再診時38点を加算します。
妊婦加算は診療所も200床未満の中小規模病院も大病院も算定することができます。点数は所定点数から初診時には75点、再診時には38点を加算します。
- 【初診料】 282点+75点=35点
- 【再診料 診療所】 72点+38点=110点
- 【再診料200床未満】72点+38点=110点
- 【再診料200床以上】73点+38点=111点
診療点数早見表も確認しておきましょう。初診と再診の注に書いてあります。
10 妊婦に対して初診を行った場合は、妊婦加算として、75点を所定点数に加算する。ただし、注7又は注11に規定する加算を算定する場合は算定しない。
注7は時間外の加算。注11は産科又は産婦人科の夜間などの時間外。
時間外の加算を算定する時は注7が優先されます。
- 時間外:482点(282点+200点)
- 休日 :647点(282点+365点)
- 深夜 :977点(282点+695点)
15 妊婦に対して再診を行った場合は、妊婦加算として、38点を所定点数に加算する。ただし、注5又は注16に規定する加算を算定する場合は算定しない。
注5は時間外の加算。注16は産科又は産婦人科の夜間などの時間外。
初診料と同じく時間外の加算を算定する時は注5が優先されます。以下は200床未満の場合です。
- 時間外:207点(72点+135点)
- 休日 :332点(72点+260点)
- 深夜 :662点(72点+590点)
妊婦加算に対する注意事項のまとめ
診療点数早見表に詳しく書いてあるのでぼくが気になった部分をまとめておきます。
- 妊娠を確認するために検査や母子手帳は必要ではない
- 内科や整形外科などどの診療科でも妊婦加算は算定できる
- 後日妊娠が発覚しても遡り請求はできない
- レセプトには妊娠している旨の記載が必要になる
こんな感じです。一番の驚きは医師が判断をするだけで算定が可能というところです。妊娠反応検査や母子手帳を確認する必要はありません。
医療事務から考えられる注意点としては、問診や診察で妊娠が発覚したことをどうやって医事課に連絡をするか、妊婦加算を嫌がって妊娠を隠したらどうするのか、出産した後の判断はどうするのか、流産や早産の場合は気がつけない可能性がある。などがあります。
特に流産してしまった患者さんに妊婦加算を算定してしまった時などは、妊婦さんへの配慮の問題などもあります。妊婦さんから申告させるのはどうなんでしょう?
妊婦加算は6歳未満の乳幼児加算点数と同じなんですよね。
妊婦加算は初診料や再診料に加えて時間外や休日、夜間の加算に対して点数がつきます。そうなると種類が多くて医療事務としては混乱してしまいそうになります。
しかし点数をよくみてみると知っているような数字なんですよね。
そうなんです。妊婦加算は6歳未満の子供に算定する乳幼児加算と同じ点数配分になっています。妊婦加算は乳幼児加算と同じなので覚える項目が一つ減りました。
ぼくがイマイチな評価をしている理由はこのあたりの点数配分もあります。
なぜ乳幼児に対する加算と妊婦に対する加算を同じ点数にしたのでしょうか?厚労省の誰もが明確な説明ができるとは思えません。
妊婦に対する加算を新設しよう!→点数はどうしようか?→新しい点数を配置するよりは既存の乳幼児加算を代用しよう!
みたいな決め方だったんじゃないかなー。と感じています。
本日のまとめ
妊婦加算は周産期医療充実のため、妊婦への気遣いを評価するために新設されました。
しかし乳幼児加算と同じ点数を配置したところで妊婦さんを避ける医療機関は減らないと思います。むしろ加算を算定したら余計に妊婦に対する責任が出てきます。
なので産婦人科を標榜している病院にはとても良い加算になりますがそれ以外の病院では余計な加算になったとも言えます。
新設された加算なので難しい部分はありますが、個人的にはもう少し練ってから出して欲しかったです。突っ込みどころが多すぎますからね。
ネットでも叩かれているし、外部の医療事務勉強会に参加しても良い評判はありません。次の診療報酬改定で消えていく項目かもしれません。