病院内のプロジェクトチームにより電子カルテの導入をするため検討を重ねてきました。
電子カルテのメリットとデメリットについて。問題点はどうするか。費用は?人員は?などなど様々な角度から導入について考え議論を重ねてきました。
最終決定は理事会などの判断になりますが、とりあえず1年半にわたる電子カルテのワーキンググループが終了となります。長かったようであっという間!!
この1年半のあいだに医療事務と電子カルテについて多くのことを考えました。そして多くの発見もありました。
他の病院まで行って運用方法の勉強をさせてもらったり見学もしました。
なので今日は医療事務と電子カルテについて。最初はオーダリングシステムから導入になりそう。などなど医療事務員の観点からいろいろと書いておきます。
病院で電子カルテを導入する背景。
ぼくの働いている病院は紙カルテを使用している病院です。
電子カルテを導入する背景としては時代の流れがあります。病院運営を考える中で一番大事なのは医師の確保になります、その次は看護師の確保になります。
医師がいなければ病院運営を行うことができません。
最近の医師や看護師が病院を選ぶにあたり紙カルテの病院を意識的に避けるようになっているらしいです。この時代にあえて紙カルテの病院に就職するメリットはないですからね。
そうなってくると病院の人員バランスが高齢者が多くなって若手が不在になります。これはまずい!!ピンチ!!ということで電子カルテの導入を考えたようです。
また別問題として増え続ける紙カルテの保管スペースがあります。
患者数については2025年問題もあるのでそれまでは増加傾向になると予測されます。つまり紙カルテの保管スペースも足りていないのです。
電子カルテ導入に関するプロジェクトチーム選出
思うところは多々ありますが医事課の部長や課長や主任そして先輩方がいる中でぼくが選抜されました。電子カルテ導入のために医療事務員が出来る事。
電子カルテは医療事務員だけでなく医師や看護師や技師にも大きな変化があります。つまり今までの運用方法が全部変更になります。これは中規模病院においてはとても大きな変化です。
患者さんが来院して受付をして診療など(診察・レントゲン・採血・注射・超音波・処置)して会計をして処方せんを渡して帰宅。この流れに電子カルテはすべてが関与してきます。
どんなに忙しくてやったことない仕事に追われていても、自分の経験になり血肉となりますからね。医療事務としての経験にはつながらない事も多々ありますが。
医療事務と電子カルテ。医療事務と紙カルテ。
結論として出てきたのは「電子カルテは紙カルテの代わりにはならない」という事です。今現在やっていることを同じように電子カルテで行うのは難しい。
すべての運用を変更する必要性があります。
新しいことを覚えるのは面倒なので今までと同じようにしたいと言う人も多々いました。しかし現在の運用方法と同じにすると電子カルテのメリットが薄れます。
採用する電子カルテにあわせて院内の運用を変更させる必要があります。
最初から運用ルールを作り直す必要があり。これはこれでとても大変。
電子カルテの病院見学をしたけど紙の削減には繋がらない事実。
これも大きなテーマになりました。電子カルテを導入したにも関わらず紙媒体の保管方法などで余計な手間暇がかかっている病院さえありました。
申込書や同意書など紙で書いたものはどこかに保管する必要があります。また、それらを電子カルテに保管するためにスキャンするスタッフを雇っている病院もありました。
他院からの紹介状や退院証明書なんかも紙で持ってきます。完全なペーパーレスを行うにはまだまだ改革が必要ですね。
すべての紙カルテの内容を電子カルテに取り込むことは労力的に難しいです。なので電子カルテ導入後も数年間は紙カルテのを残しておく必要があります。
結果的に紙カルテが一番経済的なのでは?電子カルテのコスト問題
紙カルテのまま運用するのが一番のコスト削減になることがわかりました。コスト的には電子カルテを導入するメリットはあまりないという結論になりました。
それでも、看護師など電子カルテを求める声も大きいのも現実問題としてあります。電子カルテが無いと言う理由で人員確保が難しくなっています。
しかし、電子カルテって超高いんですよ。ビックリ。
1床当たり50万~100万と言われていますが実際にそんな感じです。100床の病院なら5000万~1億円くらい必要です。
つまり、どんなに値切ったりシステムを減らしても現状よりも経費は必要になります。その必要なお金を捻出するためにやらなくてはいけない事を考える仕事を開始します。
導入にあたっての費用が高いので簡単に導入できません。
ちょっと古い資料ですが厚労省サイトに医療のIT化に係るコスト調査が掲載されていました。平均すると1床あたり55万円だそうです。つまり200床の病院なら110,000,000円です。
1億1千万です。
厚労省サイトのPDFです。全文読みたい人はどうぞ。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0607-5a2.pdf
それ以外にも導入するにあたっての作業量が膨大です。
現在のシステムから移行作業が医事システムのみならず、検査(内視鏡やレントゲンやエコー)システムやリハビリシステムや健診システムとのリンク作業が必要です。
これを取りまとめて作業する人員も必要です。
さらに、電子カルテを現場で使いこなせるか考えないといけません。実際の運用。
紙カルテにさえ必要な情報を記載しない高齢医師たちが電子カルテに入力をするのでしょうか?結局記載不備や漏れが多発して医事課の作業量は減らない可能性もあります。
医療事務と電子カルテ。とりあえずオーダリングシステムの導入になりそうです。
支出を削減できないなら収入を増やすしかありません。もしくは別の方法で支出を削減するしかありません。頭の良い経理マンが必要です。
そんな理由から妥協案としてオーダリングシステムを導入する方向でワーキンググループは話をまとめました。
- 電子カルテを導入するには負担が大きい。コスト的にも人員的にも
- なので徐々にオーダリングを導入して数年後に電子カルテ導入
みたいな形です。
数年かけて新しいシステムを導入するなんて一気に導入するより難しい作業です。
いまの時代担当者が転職することだって大いにありえます。実行委員長の医師だって他の病院に行く可能性もあります。
ならば混乱するかもしれないけど一気に導入するべき!と考えていました。
最後にオーダリングシステムが導入されると何がメリットなんでしょうか?なぜ電子カルテにしないのでしょうか?
オーダリングシステム導入に対するメリット
それならオーダリングシステムの導入なら電子カルテよりは簡単なのではないでしょうか?オーダリングシステム導入に対するメリットは以下の通りです。
- 電子カルテより導入コストが低い。導入までの作業量も電子カルテ導入よりは少ないです。
- レセプト点検の簡素化。現在は病名点検をする時はカルテを確認していましたが処方オーダリングシステムが導入されれば点検の必要性も低くなります。カルテの字が読めなくて処方した薬が読めないって事もなくなります。
- 古いシステムを一新できる。古いシステムを騙しながら使用しているのでマスタコードが変なところが多々あります。
- 待ち時間の短縮。伝票のという考え方がなくなるので会計待ち時間の短縮になります。
オーダリングシステム導入に対するデメリット
逆にデメリットもあります。
- オーダーリングシステム→電子カルテの二段階は結果的にはお金も時間も必要。
- オーダーリングシステムへの入力と紙カルテへの記載が必要となる(重複によるミス発生の可能性)
- 紙カルテは必要(運搬作業やカルテ保管スペースは必要)
本日のまとめ
厚労省の言いなりになっている部分が多々ありますが、現状の病院の運営方法や財政基盤、人員を考えたら変更しなくてもいいのではないかと思います。
お金も人も無い中で無理する必要はありません。
若手の医師に確認しても電子の方が便利だけど時間はかかる。紙カルテなら(適当に書くから)診療も早い。と言っていました。
どんな結論が出るかわかりませんが、医局会&経営会議の結果を楽しみに待ってみようと思います。